生物の「恵み」を活用したものづくりを推進しています

 21世紀に入り、資源・エネルギー、環境問題が深刻化しています。そのような中、バイオマスを上手に利用した研究が世界中で進められています。バイオマスのキーワードとして、豊富な資源量、生分解性、持続可能型資源、カーボンニュートラルなどが挙げられますが、素材としても大変に優れています。バイオマスの特異な化学構造や緻密な階層構造は生物が長い進化の過程で獲得してきたわけで、その優れた物性や機能は自明と言えるでしょう。
 ですが、バイオマスは人類が利用するために作られたわけではないので、材料として自在に使いこなすのはなかなかにコツがいります。生物が完成させたその化学構造や階層構造の必然性をよく考えて、上手に利用する科学を推進していきたいと考えています。

研究紹介

カニ殻由来の新繊維「キチンナノファイバー」

鳥取県には国内有数のカニの水揚げ基地があり、そこでは大量の廃カニ殻が発生します。私たちはカニ殻の主成分であるキチンをナノファイバーとして取り出すことに成功しました。キチンナノファイバーは幅が10ナノメートルの極細繊維であり、優れた物性を備えています。また、様々な生体への効果を明らかにしつつあります。カニ殻の有効活用のため、キチンナノファイバーの利用開発に取り組んでいます。
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アフリカ睡眠病治療薬

アフリカ睡眠病を引き起こす原虫(Wikipediaより転載)
アフリカ睡眠病はトリパノソーマ原虫によって引き起こされる風土病で、感染者は5~7万人と言われています。糸状菌より単離されたアスコフラノンは殺虫効果が確認されています。我々は新規治療薬の開発のため、有機合成の手法によりアスコフラノンを改良し、より効果的で効率的な合成に取り組んでいます。


キチン由来生体接着剤

外科手術において速やかに患部を閉塞するために、縫合糸に変わる生体接着剤が求められています。従来の生体接着剤と比較して感染症や毒性のリスクが無く、迅速・強固に接着可能なキチンを基質とした生体接着剤の開発に取り組んでいます。